エーザイ「アデュカヌマブ」で注目!認知症薬候補銘柄? エーザイ「アデュカヌマブ」で注目!認知症薬候補銘柄?

エーザイ「アデュカヌマブ」で注目!認知症薬候補銘柄?

日本の厚生労働省に相当するFDA(米食品医薬品局)は6月7日に、エーザイ(4523)と米バイオジェンが共同開発しているアルツハイマー型認知症治療薬「アデュカヌマブ」について、製造販売を承認しました。
疾患原因の病理に作用する世界初の治療薬となります。
アルツハイマー型認知症は脳内にアミロイドベータ(Aβ)というたんぱく質が蓄積することで神経細胞が死滅し、病気が進行します。
アデュカヌマブはAβを減少するように設計されているのだそうです。

この薬を巡っては紆余曲折がありました。
効果に期待する向きが多くいる一方で、薬がアルツハイマー型認知症に的確に効いているというエビデンス(化学的根拠)を得るのも難しかったからです。
例えばどこまでが薬効で、どこまでが老化によるものかの線引きなどです。
エーザイは19年3月には国際的な治験(臨床試験)で主要な評価項目を満たせず、開発を中止しました。
再度のチャレンジで承認にこぎつけましたが、販売後の試験を行う必要性もあります。
しかし、承認されたことは患者やその家族にとっては朗報です。
報道では米国だけで患者が600万人で、日本でも認知症全体で患者600万人のうちアルツハイマー型は6~7割とみられます。
全世界では数千万人規模に達するとみられています。

アルツハイマー型認知症薬は2003年を最後に承認された新薬はなく、これまでの薬は一時的な症状の緩和であり、根本的な原因に対処するものではありませんでした。
大手調査機関のアナリストはピーク時年商で5,000億円になると試算しています。
薬の世界では年商1,000億円でブロックバスター(大ヒット製品)といわれるので、先行きの期待感が高まっています。

また、エーザイの成功は、他の製薬企業にとっても大きな励みとなり、開発が進む可能性もあります。
また、エーザイはアデュカヌマブのほかにも3つのアルツハイマー型認知症薬の開発パイプライン(新薬候補)を有しています。

今回はエーザイのパイプラインや、アルツハイマー型認知症薬の開発を行っているその他の日本企業を取り上げます。

なお、薬の開発段階は試験管での実験、前臨床試験(動物を使った実験)を経て、人に投与する臨床試験に進みます。
臨床試験は3段階に分かれています。
各段階の一般的な試験内容(抜粋)は以下の通りです。

第1相臨床試験 少数の健康な成人を対象に安全性を調べる
第2相臨床試験 少数の患者を対象に薬の効き目や副作用が出るかを調べる
第3相臨床試験 多数の患者を対象に他の治療薬と比較し、効果と安全性を調べる。

この3段階をクリアすると、承認の申請に進みます。

エーザイ(4523)
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「アデュカヌマブ」 アルツハイマー型認知症の進行を抑える世界初の薬としてFDA(米食品医薬品局)から製造販売承認を取得。

「BAN2401」(開発コード、以下同) アデュカヌマブと同様の抗Aβ薬として現在第3相臨床試験を実施中。
アデュカヌマブよりも薬効高いとの見方も。

「E2814」 遺伝性のアルツハイマー型認知症対応薬として現在臨床第1相試験を実施中。

「E2511」 新規経口シナプス再生剤(疾患修復)で臨床第1相試験を実施中。

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JCRファーマ(4552)
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ハンター症候群治療酵素製剤(開発コードJR-141)について、21年3月23日に製造販売承認を取得。
5月に販売開始。
ハンター症候群は骨格変形や低身長などの症状出るライソゾーム病の一種。
既存の治療酵素剤は脳に薬が届かなかった。
同社では「J-BRAIN Cargo(ジェイ・ブレイン・カーゴ)」(血液脳関門通過技術)技術を使ってこの問題を解決している。

脳に薬が届けば、アルツハイマー型認知症など中枢神経疾患の治療薬としても使えるのではないかとの見方が多い。
同社では複数の大手製薬メーカーと、それぞれ提携し開発を目指している

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富士フィルムホールディングス(4901)
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2019年12月に早期アルツハイマー型認知症治療薬候補Tー817MA」について欧州で第2相試験を開始。
たんぱく質の一種であるリン酸タウの蓄積が認知機能の低下をもたらす。
T―817MAはこのリン酸タウの減少が米での臨床試験で確認されているという。
買収した富山化学の開発薬。
日本で第2相試験を実施中。
神経細胞死に対する強い抑制作用がある。

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塩野義製薬(4507)
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2020年11月に認知機能改善薬候補「BPN14770」が第2相試験で良好な結果を得たと発表。
言語領域における認知機能の有意な改善を確認。
アルツハイマー型認知症やその他の発達障害疾患などにも期待と。

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協和キリン(4151)
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アルツハイマー型認知症を対象とした「KHK6640」(開発コード)が日欧で第1相試験を実施中。
Aβペプチドの病的凝集体(粒子の集まり)と選択的に結合するモノクローナル抗体。
投薬で進行を抑制することを期待。

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中外製薬(4519)
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親会社のロシュと共同開発のAβ抗体関連のアルツハイマー型認知症治療薬候補「RG1450」が国内第3相試験、抗タウヒト型モノクローラル抗体「RG6100」が第1相試験を実施中。

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少子高齢化が先進国で最も早く進む日本。
アルツハイマー型認知症の分野で世界のリード役になってもらいたいところです。

当コラムは投資の参考となる情報提供を目的としており、特定の銘柄等の勧誘、売買の推奨、相場動向等の保証等をおこなうものではありません。
また将来の株価または価値を保証するものではありません。投資の最終決定はご自身のご判断と責任で行ってください。詳しくは「ご注意事項」をご確認ください。

和島英樹

和島英樹

経済ジャーナリスト。

日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年ラジオNIKKEIに入社。
東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。
2020年6月に独立。企業トップへの取材は1,000社以上。
ラジオNIKKEI担当番組に「マーケット・プレス」など。
四季報オンライン、週刊エコノミストなどへ寄稿多数。
国際認定テクニカルアナリスト(CFTe)。
日本テクニカルアナリスト協会評議委員。

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