非鉄金属の価格が上昇傾向にあります。
中国の経済拡大、欧米ではワクチン接種の進展による新型コロナウイルス感染症からの景気回復などで、需要が増加していることが背景となっています。
銅のほか、ニッケルやアルミなどへの市況関連株への関心も高まってきています。
電気自動車(EV)などに使われることも追い風となっています。
ロンドン金属取引所(LME)の銅の価格は昨年から上昇が継続し、5月7日には2011年2月の最高値1万190ドルを10年3か月ぶりに更新しました。
一時は1万400ドル台になり、新型コロナ影響で需要が激減した20年3月の4,371ドルと比べて2.4倍となっています。
銅価格は景気の動向を占う上での判断材料となることから「ドクター・カッパ―(銅)」と呼ばれています。
銅以外にもニッケルやアルミ価格なども上昇傾向にあります。
銅は加工性が高く、耐食性に優れ、熱や電気が伝わりやすいなどという特徴があり、工業だけでなく、医療や船舶、建築など広範囲に活用されています。
世界の経済が拡大すると使われる量が増加します。
使用量の増加で価格が上昇する傾向が強いとされます。
ニッケルを含んだ材料も日常生活で大きな役割を果たしています。
例えば調理器具、携帯電話、医療機器、建築物、電池などに使われます。
ニッケルも耐食性が高く、耐久性に優れており、高温や低温での強度が高いことで特殊な電磁特性を幅広く備えています。
大手調査機関によれば、銅、ニッケルともに世界の需要のうち約5割が中国と推計されています。
また、アルミの比重は鉄の3分の1程度と軽量で、かつ軟らかいという特徴があり、生活に欠かせない金属です。
世界的に脱炭素の動きが加速する中で、特にEV向けの需要が増加している面も見逃せません。
EVはガソリン車に比べてモーターなどに3倍強の銅を使うとされています。
蓄電池には鉛やニッケルが不可欠です。
EVはバッテリーが重くなるため、車体を軽くするためにアルミの使用も増えるとみられています。
市況の上昇は関連企業にとって、業績面からのメリットになる可能性があります。
住友金属鉱山(5713)
金、銅、ニッケルを扱う非鉄金属の大手。
資源開発や製錬に強みがあります。
自らも鉱山権益を所有しており、非鉄金属の市況上昇の恩恵を受けやすい。
リチウムイオン電池の正極材料も手がけています。
国内唯一の大規模金山である菱刈金山を保有しています。

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三菱マテリアル(5711)
非鉄金属の総合首位。
銅、アルミ、加工、電子材料などが柱です。
伸銅品では国内トップシェアを誇ります。銅は青蘭事業のほか、チリやインドネシア、カナダの鉱山に出資しています。
ペルーでも探鉱中。
新鉱山の開発をさらに進める方針のようです。

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大平洋金属(5541)
ニッケル合金やステンレスの原料であるフェロニッケル精錬で国内首位。
世界でも有数の存在です。
ニッケル鉱石をフィリピンやニューカレドニアから仕入れ、フェロニッケルを生産。
国内やアジアのステンレスメーカーに販売しています。
フィリピンに保有するニッケル鉱山の権益は持ち分法利益に貢献します。

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日本軽金属ホールディングス(5703)
アルミニウムの総合メーカーで世界の大手。
圧延、加工、販売までを一貫して手掛けています。
中国やインド、東南アジアなど海外でも展開しています。
自動車の軽量化ニーズが増加傾向にあります。
リチウムイオン電池向け箔も好調なようです。

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アルコニックス(3036)
非鉄金属原料の専門商社。
アルミ、銅、ニッケルなどの原料のほか、各種半製品を自動車や電機メーカーなどに納入しています。
レアメタルやレアアースの輸入にも強みがあります。
09年に金属加工メーカーを買収し、製造業にも進出しています。

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和島英樹の「深堀りテーマ株分析」
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和島英樹
経済ジャーナリスト。
日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年ラジオNIKKEIに入社。
東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。
2020年6月に独立。企業トップへの取材は1,000社以上。
ラジオNIKKEI担当番組に「マーケット・プレス」など。
四季報オンライン、週刊エコノミストなどへ寄稿多数。
国際認定テクニカルアナリスト(CFTe)。
日本テクニカルアナリスト協会評議委員。
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