ビットコイン関連銘柄&アフターコロナ銘柄!HOTな銘柄、COOLな銘柄 ビットコイン関連銘柄&アフターコロナ銘柄!HOTな銘柄、COOLな銘柄

ビットコイン関連銘柄&アフターコロナ銘柄!HOTな銘柄、COOLな銘柄

株式アナリストの鈴木一之です。
2021年2月の「HOTな銘柄、COOLな銘柄」をお届けします。
まずは2月の株式市場の全体像から見てまいります。

全体相場の振り返り

日経平均は前月末の終値、27,663円から2月末は28,966円へ、上昇率は+4.71%となりました。
前月の1月相場が+0.80%にとどまっていたことと比べると、かなり大きくはね上がりました。
2月相場の変動の大きさが見てとれます。
月間では4か月連続での陽線、前月比プラスとなりました。
これに対してTOPIXは+3.10%にとどまりました。
TOPIXも1月の+0.22%と比べれば2月相場は大きめの上昇を記録したのですが、日経平均の変動と比べると見劣りします。
TOPIXも4か月連続でプラスとなりましたが、2月はすべての期間を通じてTOPIXに対して日経平均の優位性が強調された月となりました。

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週足表示、2021年3月9日まで

米国ではNYダウ工業株が2月は+3.17%と大きく上昇し、史上最高値を更新しました。
NASDAQは上昇したものの+0.93%にとどまり、小さな上昇幅となりました。
もっともこれは2月半ばにテクノロジー株の大半がピークをつけて折り返したためで、2月のNASDAQは後半に向かって徐々に失速気味に推移しました。
このあたりの雰囲気からも2月相場は、株式市場全体が大きな変曲点を迎えたように感じられます。
日経平均は実に30年ぶりとなる「3万円の大台乗せ」という節目を突破しましたが、物色動向や株式市場を取り巻く背景、経済環境などあらゆる点で変化が生じつつあります。

昨年11月に米国で誕生したバイデン政権が本格的にスタートし、コロナウイルスの猛威に対して米国が持てる力をすべて振り向けて、ウイルス鎮圧に向かうスタンスを打ち出した点が2月の最も大きな特徴です。
最優先の国家プロジェクトとなったワクチン接種が急がれ、それとともに新規の感染者数が目に見えて減少してゆきました。
都市封鎖も少しずつ解除に向かい、経済の再開が着実に近づいているという感触から、マネー市場における投資家の行動と認識が急速に変化しつつあるようです。
経済再開への道筋は世間一般にとってはよいことに違いありませんが、マネー市場にとっては必ずしもよいことばかりではないというきわめて微妙な、神経質な状況でもあります。

日経平均3万円突破の背景

日経平均が3万円の大台を30年ぶりに突破した点について、少しだけ触れておきます。
まず2月15日(月)の週明け月曜日に、いきなり大台乗せを果たしたことに驚かされました。
昨年暮れからの上昇ピッチが速かったことに、市場参加者の多くが警戒心を抱いていたことは事実です。
調整(株価の下落)がどこかで起こると、誰もが考えていた矢先に起こった3万円乗せでした。

大方の予想を覆して日経平均が3万円を突破した背景は、いくつか考えられます。

(1)3月決算企業の第3四半期決算は安定感を増しています。
上場企業の3割は業績見通しを上方修正しており、収益面で見ればコロナ危機を克服しつつあります。

(2)コロナウイルスの感染拡大を食い止める努力が続いています。
日本でも緊急事態宣言が発令され、感染者数および死者数は着実に減少しています。
2月17日からは日本でも医療従事者を対象にワクチン接種が始まりました。
欧米から2か月遅れてのスタートですが、始まったことは事実です。

(3)米国を中心に先進国ではコロナ対策としての経済刺激策が強力に進められています。
金融緩和は一段と長期化する見通しとなっており、財政政策も当初計画に上乗せされて実施される運びとなりそうです。
コロナ危機で寸断された経済活動の再開が近づいています。

大枠としては以上のようにまとめられます。
それらをさらに掘り下げてみます。

ゲームストップ乱高下も押し目買い活発な米国株

2月相場はゲームストップ株の猛烈な乱高下で始まりました。
1月最終週の1週間はNYダウ工業株が▲600ドル以上の下落を2日も経験するほど動揺しており、不穏なムードのまま2月相場は幕を開けました。

ゲームストップの株価下落はあまりに突然のことで、最初のうちは起きていることがまるで把握できない状態でした。
手数料無料のネット証券会社、ロビンフッドを経由して個人投資家の大群がヘッジファンド、シトロン・リサーチの空売りポジション目がけて一斉に買い向かい、シトロンが窮地に陥るとの出来事がきっかけでした。

シトロンは損失を回避するために保有する主力銘柄の売却を急ぐ可能性があり、あるいはシトロンの損失が大きくなるとヘッジファンド自体が資金的に行き詰り、それが信用不安につながって株価が不安定になる、など様々な憶測が飛び交い、それがマーケット全体を揺さぶりました。

株価急落を招いた元凶とされるゲームストップは、業績が悪化したいわゆる「ペニーストック」、ボロ株のような存在でしたが、それが一日で時価総額1兆ドルのアップルの売買代金を上回るほどの人気を集めました。
米国の個人投資家はSNS「レディット」を通じて情報を交換し、マーケットで協調的な行動を取っていることに金融当局が疑問を抱き、オプション取引に関する調査と規制を強化するとの観測が飛び交いました。
バイデン政権はウォール街に対して厳しいスタンスで臨む意向を持っていることが懸念されており、それが今回の一件で現実化しかねないとの不安も広がっていました。
今では「ロビンフッド・ショック」と呼ばれるようになったこの出来事は、結果だけを見れば、当初懸念されたことは現時点では何ひとつ実現しておりません。
ゲームストップ株が話題にのぼることもその後はさほどなくなりました。

マーケットが落ち着いてみれば、株価が値下がりした局面での下値買いが活発化したという事実だけが残りました。
日本経済新聞によれば、2月3日までの1週間でテクノロジー系ファンドには過去最大となる42億ドル(4,400億円)の資金流入があったそうです。

この時の米国株式に対する買い方の強力な投資意欲の背景には、以下の4つの強気の根拠があると見られています。

  • (1)バイデン政権下における巨額の財政支援策
  • (2)FRBによる強力な金融緩和とその長期化
  • (3)急速なワクチン普及政策、いわゆる「ワープ作戦」、経済正常化への期待
  • (4)テクノロジー企業を中心とする好調な企業収益

これらの4つの強力な支援材料によって、ゲームストップ株が乱高下したくらいではびくともしないほどの強靭な米国の株高構造が組まれていることがあらためて認識されました。

業績好調も仮想通貨など一部ではバブル化懸念か

日経平均3万円乗せの助走として、日本でも好調な企業業績が背景に存在します。
2月は月初から3月決算企業の第3四半期の決算発表シーズンを迎えており、ソニー(6758)、日立(6501)、パナソニック(6752)、トヨタ自動車(7203)が相次いで大向こうをうならせるほどの好決算を発表しました。

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週足表示、2021年3月9日まで

2月8日(月)は月曜日から株式市場は大幅高となり、日経平均は週初から29,000円の大台に乗せるという好調な値動きを示しました。
コロナウイルスによる新規の感染者数が日本でも着実に減少に向かい、経済再開への期待の高まりからそれまで見向きもされなかったバリュー株への物色意欲も高まっていきました。

さらにコロナウイルスの制圧、経済再開への期待が高まるにつれて国際商品市況の値上がりも急ピッチになりました。
原油価格はWTI先物価格で2月初旬に53ドル台だったものが、2月16日には60ドル台に乗せました。

原油市況が上昇すると、それに伴って原油を材料とする石油化学製品が一斉に値上がりします。
さらに鉄鋼製品や銅、ニッケルなどの非鉄市況、レアアースまで上昇が伝播してゆきました。
景気は着実に上向いており、あらゆる物価が連動して広く世の中のあらゆる価格上昇が始まっています。

あらゆる物価の上昇に連動するかのように、ビットコインも顕著な値上がりを示しました。
1月末の時点でビットコインは日本円で348万円でしたが、足元のピークとなった2月21日には608万円まで上昇しました。
ビットコイン高騰の背景にはドルに対する信認の低下という大きな問題がひそんでいるとされています。
空前の財政支出を続けるバイデン政権の政策に対して、市場は通貨としてのドルの価値の目減りを心配しています。

テスラは資産運用の一環としてビットコインを15億ドル(1,600億円)購入したと発表しました。
このような現状をバブルとみなす人も増えつつあります。
バブル論議が活発になったのも2月相場の特徴のひとつです。

コロナ危機は峠を越えたように見えますが、まったく予断は許されません。
感染者数および死者数はいまだ着実に増加を続けています。
そのような状況において金利の上昇、物価高と空前の株高をどこまで両立させて向かい入れることができるのか。
マーケットは2月相場を通じてその落としどころを探り続けているように見えます。

外部環境は不安定さを増す一方です。
2月第2週には東京五輪組織委員会の名誉会長である森喜朗氏が舌禍事件から辞任を表明しました。
コロナ危機で五輪の開催すら危ぶまれる状況が続いており、そのような時に組織の核となる人物が辞任するという事態は社会的にも不安心理をかき立てました。

2月第3週には、総務省の上級幹部11人が民間企業からの接待が理由で公務員倫理規程への違反が問われ減給などの処分が下されました。
衆院予算委員会は審議の大半の時間をこの問題の追及に費やしました。
総務省は菅義偉首相がかつて大臣を勤めた官庁であり、そのおひざ元の官庁から不祥事が明るみに出て、しかも首相の長男が事件に関連しており、そのことがワクチン調達の不手際とも重なって内閣支持率を押し下げ、政権運営に影を落としています。

「よいニュースは悪いニュース?」長期金利と中央銀行に注目

2月相場における特筆すべき点のひとつが日経平均の3万円乗せだとすると、もうひとつが長期金利の上昇、米国10年国債金利の1.5%乗せです。

2月26日(金)に株式市場は大きく下落しました。
日経平均は▲1,202円もの大幅安となり、29,000円の大台を割り込んで引けました。
1日の下げ幅としては4年8か月ぶりの大きさです。

1月もそうでしたが、最近は月末になると株価は大きく下押しします。
1月末は前述の「ロビンフッド・ショック」です。
それに続いて2月末も最終週は波乱含みの展開となりました。
株価下落のきっかけは金利の上昇です。

コロナ危機によって世界中で空前の規模の金融緩和が続いています。
加えて大規模な景気刺激策も整いつつあり、米国ではバイデン政権が1兆9,000億ドルもの巨額のコロナ対策の成立を目指しています。

エコノミストからは、景気刺激策の乱発が景気の過熱をもたらしインフレを招くとの警告が何度も出されています。
債券市場では、指標となる米国10年物国債金利が2月末には1.6%台まで上昇しました。
これは2020年2月以来の水準であり、コロナ危機以前のレベルに戻ったこととなります。

日本でも金利の上昇が始まっています。
2月末には10年国債金利が0.175%まで上昇し、2016年1月に日銀がマイナス金利政策をスタートさせた時点の水準となりました。

それに対して株式市場では、日銀がETFの買い入れを止めたのではないかと疑心暗鬼になっています。
日銀は3月18~19日に開催される金融政策決定会合において、金融政策の運営の「点検」を行うとかねてアナウンスしています。
「点検」と言う用語は金融政策の修正、見直しを意味します。
現在実施されている長短金利の操作「イールドカーブ・コントロール」やETF購入の金融調節手法を見直すと市場の観測筋は予想しています。

これまでの経験則では、午前中に株式市場が▲0.5%以上下落した時は、ほぼ例外なく午後に入ってETFを購入してきました。
それが2月は午前中に▲0.5%以上も下落した日は、2月18日(木)、19日(金)、24日(水)の3回ありましたが、そのいずれの日も日銀はETFの購入を見送りました。
以前はこのようなことはまずなかったので、日銀は明らかにスタンスを変えようとしています。
そのような姿勢を匂わせようとしています。

その後、2月26日(金)に日経平均が1日で▲1,202円も下落した日に、ようやく日銀は501億円のETF買い入れを行いました。
これが2月に入って初めての購入です。

コロナウイルスとの戦い、経済の底割れ回避という二律背反の目標を追いかけているうちに、低金利の長期化と財政政策の拡大とによって、世界的な株価の上昇が起こりました。
これこそがマーケットで言うところの「悪いニュースはよいニュース」の典型例です。
コロナ危機が怖いから株価が上がるという皮肉な結果が生じています。
現在、経済は表面的にでも回復に向かっており、コロナ危機もワクチン接種が猛烈なスピードで実施され、コロナ危機は終息に向かう兆候が見え始めています。
そうなると今度は「よいニュースは悪いニュース」と正反対に変わり、金利は上昇して株価が下落する逆回転の動きが始まりつつあります。

NASDAQを中心に「GAFA」のようなテクノロジー株に不安定な動きが見られるようになりました。
金利と株価、コロナ危機と経済再開、FRBや日銀をはじめ各国の中央銀行と政策当局は、ここに来て二律背反というむずかしいかじ取りを迫られるようになってきたようです。

「HOTな銘柄」

ここからは個別銘柄の物色の流れです。

全体としては、昨年から今年にかけて、コロナウイルスによる経済の停滞で売られていた銘柄が反発に転じました。
反対にそれまで買われていた銘柄が一斉に下落に転じ、これまで定着していた流れが大きく転換したのが2月相場の特徴です。

昨年暮れから少しずつ始まっていたバリュー株物色の流れが一段と強まりました。
上昇率の上位銘柄の数で比較すると、2月は東証1部で131銘柄が+20%以上の値上がりを記録しました。
これは1月の57銘柄、昨年12月の84銘柄と比較するとかなり増加しています。
初速となった昨年11月の「バイデン相場」での244銘柄と比べるとずいぶん見劣りしていることも事実です。

2月相場は日経平均などの株価指数が月の半ばでピークをつけて折り返しました。
それゆえに物色の方向性がつかみにくい、難易度の高い相場となりましたが、それでも個々の銘柄のパフォーマンスはかなり良かったことが数字の上では確認できます。

相場の方向性をうまくつかんで流れに乗れば、かなりの好成績をあげることができた相場ですが、2月相場はそれほど簡単な地合いではありません。
物色の流れが大きく変わる時は常にそうですが、相場の波に翻弄されがちな振幅の大きな値動きが頻繁に見られました。
市場参加者の心理がそれだけ揺さぶられた月間と言えるでしょう。

2月相場で値上がりの顕著だった「HOTな銘柄」は以下の顔ぶれとなりました。

(1)経済再開への期待、アフターコロナ銘柄

コロナウイルスのワクチン接種が世界中で始まったことから、経済正常化への期待が急速に高まりました。

値上がり順で第35位に日本航空(9201)が上昇率+35.8%で登場しています。
今回のコロナ危機によって航空会社は最も大きな被害を受けた業種のひとつです。
各国を代表する、いわゆる「ナショナル・フラッグ・キャリア」が次々と経営危機に陥り、政府からの資本注入、資金支援を受けるまでに至りました。
日本航空も今2021年3月期の業績は、売上高が前年比でほぼ半減し、最終損益で▲2,550億円の赤字は避けられない見通しです。
それを反映して株価は、コロナ危機前の3,400円台から、昨年末には1,500円台へと半値以下になるまでの激しい下落を余儀なくされました。
それが2月相場では経済回復、運航再開への「期待」によって2,500円台にまで急速に値を戻しました。

同じように18位にジャムコ(7408)が+43.6%の上昇率でランクインしました。
ジャムコは米国のボーイングと欧州のエアバスという世界の2大航空機メーカーにラバトリー(航空機の化粧室)やギャレー(厨房設備)を独占供給しています。
航空会社の経営が未曽有の危機的状況に直面する過程で、同社の業績も大幅に悪化しました。
日本航空と同じように今期の赤字転落は避けられない見通しで、それだけに経済再開への期待によって株価は大きく反発しました。

旅行業界では、オンライン上でチケット予約を行うエアトリ(6191、第6位、+62.9%)やオープンドア(3926、第25位、+40.6%)、大手旅行代理店のエイチ・アイ・エス(9603、第22位、+41.1%)、ホテルチェーンのグリーンズ(6547、第19位、+41.4%)などの株価に顕著な上昇が見られました。

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週足表示、2021年3月9日まで

鉄道会社でも西武HD(9024、第45位、+33.1%)はプリンスホテルチェーンを展開し、売上げに占めるホテル・レジャー部門の比率が36%とかなり高くなっています。
箱根を訪れる外国人観光客の減少が響き、株価はコロナ危機以前と比べて3分の1まで下落していました。
それだけに株価のリバウンドも勢いづいています。

旅行関連ではほかにも、海外への渡航客、あるいは日本を訪れるインバウンド消費者向けに無線ルーターのレンタルサービスを手がけるビジョン(9416、第37位、+35.1%)が大幅に上昇しました。
旅行以外のジャンルでは、ブライダル産業、カラオケチェーン、アパレル販売、それに介護ビジネスが値上がり上位銘柄に見ることができます。
いずれもコロナウイルスの感染防止のための「3密」を回避するために、営業の自粛を求められた業種でもあります。

テイクアンドギブ・ニーズ(4331、第7位、+58.3%)は少子高齢化の日本にあって、スタイリッシュなブライダルで人気を博した業界のパイオニアです。
しかし今期は感染防止のために結婚式そのものを中止・延期するケースが相次いでおり、業績は急降下して▲155億円の最終赤字の見通しです。
日本でワクチン接種が始まって経済活動の再開が現実のものになれば、結婚式の需要は真っ先に戻ってくるとの期待から、株価は2月に急反発に転じました。

ブライダルが若者を対象とするものであれば、介護施設は高齢者を対象としています。
介護施設での高齢者の感染率が高く、ひとたびコロナウイルスが広まるとクラスターが発生しやすく重症化しやすいことが警戒され、介護業界は厳しい状況に置かれました。
関東で介護施設を展開するツクイHD(2398、第4位、+64.7%)は、コロナ危機によって株価は3分の1を下回るまでに下落しており、打開策としてTOBによってアジア系の投資ファンド(MBKパートナーズ)の傘下に入ることを受け入れました。
2月上旬の発表以来、株価はTOB価格である924円にサヤ寄せする形で大幅高となりました。

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週足表示、2021年3月9日まで

カラオケボックスも「不要不急の外出を避ける」、「3密を回避する」という感染防止策で最もダメージを受けた産業です。
「カラオケ本舗まねきねこ」を展開するコシダカHD(2157、第33位、+36.5%)は、女性だけの健康体操教室「カーブス」をチェーン展開するカーブスHD(7085)を昨年3月に本体から切り離して上場させた後は、本体の株価が急落することを受け入れ、2月になって今度は大きく盛り返しました。

紳士服の青山商事(8219、第43位、+33.4%)、セレクトショップのTOKYO BASE(3415、第13位、+51.3%)などアパレル各社もコロナ危機による落ち込みの厳しかったビジネスで、それが一転して急速に回復に向かっています。
実際に青山商事の月次売上高を見ると、既存店売上高は2021年3月期の上半期累計(4~9月)では前年同期比▲45.6%もの大幅な落ち込みとなりました。
それが下半期累計(10~2月までの5か月間)では▲18.5%までマイナス幅が縮小しています。
TOKYO BASEも2021年2月期の上半期累計(3~8月)では前年同期比▲21.5%の落ち込みでした。
それが下半期累計(9~2月)では▲3.2%とやはり減少幅が急減しています。
それが2月相場における株価リバウンドの大きな背景にもなっています。

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(2)好決算?悪材料出尽くし?決算関連銘柄

2月は決算発表シーズンです。
2月相場では企業から発表された決算内容に影響されて株価が変動する銘柄も相次ぎました。

一般に「株価が決算に反応して動いた」と表現する場合、その態様にも様々なパターンがあります。
よい決算内容には株価はプラスの反応を示し、悪い決算にはマイナスの反応を示す、というのがごく通常のパターンです。
しかしマーケットの動きとして、このような原則的な動きばかりではありません。
決算内容がよいのに株価はそれらをすでに織り込んでいて、発表後はマイナスの反応を示したり、反対に決算内容が悪いのに悪材料がすべて出尽くして、発表後に株価は急騰したりと、反応は実にさまざまです。

ここでは決算のよかった銘柄を取り上げます。
2月の月間値上がり率でトップのダイヤモンド・エレクトリックHD(6699、第1位、+114.7%)はまさにその典型的な事例です。
2月12日に発表された第3四半期の業績は、営業利益が8.8億円(前年は▲2.9億円の赤字)で黒字転換を果たしました。
これによって通期の業績見通しも、営業利益をそれまでの3.3億円から13.0億円に上方修正しました。
元々が経営不振のダイヤモンド電機と田淵電機が経営統合して再建中だっただけに、株価はこのニュースを強烈なサプライズと受け止め、発表直前の2,000円から発表後には4,800円まで短期間に大きく上昇しました。

同じく上昇率の上位につけているスノーピーク(7816、第3位、+72.1%)はこだわりのアウトドア用品を販売しています。
3密を回避して遊べるキャンプがコロナ禍で一躍、人気のレジャーとなっており、単価の高い「スノーピーク」製品はキャンプ愛好家の間でもあこがれの的となっています。
2月12日に発表された2020年12月期の決算は、営業利益が14.9億円(+61%)の大幅な伸びとなり、続く2021年12月期も20.5億円(+37%)で、勢いが衰えることなく今期も大幅な利益成長が期待されています。
ゆえに決算発表を機に株価は大きく動意づくこととなりました。

このほかにも好決算の発表をきっかけに株価の人気に火がついた銘柄には、デジタルマーケティングのオーケストラHD(6533、第9位、+52.7%)、ギフト用電子チケットのギフティ(4449、第15位、+44.6%)、ネット通販のスクロール(8005、第20位、+41.3%)、DXコンサルのベイカレント・コンサルティング(6532、第34位、+36.0%)、データ分析のブレインパッド(3655、第47位、+32.3%)、ミシン製造のペガサスミシン製造(6262、第48位、+32.2%)があります。

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これとは反対に、発表された決算は必ずしもよいものではなかった、むしろ悪かったのに、それが悪材料の出尽くしと受け止められて株価が上昇した銘柄も多く見られました。
景気の底入れ局面ではよく見られる光景です。

代表的な銘柄は工業用ミシンのJUKI(6440、第30位、+36.9%)です。
2月12日に発表された2020年12月期の決算は、営業利益が▲44.6億円の赤字となりました。
JUKIは3か年計画の構造改革に取り組んでおり、その初年度にこれほどの赤字を計上してウミをすべて出し尽くした形となりました。
会社側の見通しとして、2021年12月期の営業利益は31.0億円の黒字を予定しています。
中国と米国市場で売上げが前年を上回るようになっており、業績が最悪期を脱したことを感じ取って株価は堅調な動きを続けました。

同様の事例として、UMCエレクトロニクス(6615、第2位、+85.0%)、河合楽器(7952、第36位、+35.3%)、パンチ工業(6165、第41位、+33.8%)もそのように考えられます。

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(3)ビットコイン関連株

2月相場での物色動向を語る上でビットコイン関連株を除外することはできません。
昨年10月ごろからじわじわとビットコインが上昇し始めました。
10月半ばに120万円だったビットコインは、10月末には140万円になり、11月末には200万円、年が明けて1月1日には300万円に達しました。
それが2月1日には350万円に乗せ、2月21日にはついに600万円にまで到達したのです。
なぜこれほどの短期間でビットコインがここまで急騰したのか、当初から様々な見方がありましたが、確かなことは判然としないまま現在に至っています。
2月9日(日本時間)にはテスラが保有資産を分散する一貫として15億ドルのビットコインを購入したという事実も判明しました。

かつては仮想通貨と呼ばれた暗号資産は、代表格はビットコインです。
実体のないデジタル通貨として認識されており、上昇しても下落しても市場はざわつきます。
NY株式市場が史上最高値を更新し、日経平均も30年ぶりの3万円乗せを果たした時期とほぼ重なるだけに、これもバブル現象のひとつであると各方面から指摘されました。

上昇の背景には様々な要因があると思いますが、ひとつの仮説としてドルの信認の低下が挙げられます。
2020年5月に「ブラック・ライブズ・マター」運動が全米で激化し、10月からコロナウイルスの感染が米国で拡大したことで、米大統領選におけるトランプ大統領の旗色が悪くなり、バイデン候補(当時)が優勢との見方が強まりました。
バイデン候補が勝利を収めて民主党政権が誕生すると、コロナ対策が強化され、大規模な財政支出が発動され、それに加えて民主党政権の格差是正、大きな政府の実現が志向され、それが連邦債務の増加、財政赤字の拡大→ドルの信認低下→代替資産への資金逃避→金の上昇、ビットコインの上昇、という連想が働いている模様です。
実際にバイデン政権が誕生するとコロナ対策ががぜん強化され、米国の財政赤字は空前の規模に達することが確実となりました。
イエレン財務長官も財政支出の拡大を後押ししています。

ドルの信認はまだ失われてはおりません。
むしろ反対に、米国では長期金利が上昇してドルの独歩高の基調が強まっています。
いずれにしろビットコインが上昇を続けて最高値を更新すると、それだけで代替資産の人気が高まり、マーケットでは不安心理が台頭している状況が浮かび上がります。
ざわざわする心理状態も無理はありません。

関連銘柄として、マネックスグループ(8698、第5位、+64.1%)、セレス(3696、第12位、+51.3%)、マネーパートナーズグループ(8732、第27位、+39.0%)が挙げられます。
いずれも暗号資産の交換所を傘下企業に有しています。

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「COOLな銘柄」

2月相場で下落した銘柄、「COOLな銘柄」にリストアップされるものの多くは、決算内容に関連して株価が値下がりした銘柄がほとんどです。

決算に関連して値下がりする銘柄にも何パターンかに分かれます。
「決算が悪くて下落した銘柄」には、決算が予想通りに悪かったために下落する銘柄と、「決算はよかったが予想していた水準には届かなかった」ために下落する銘柄があります。
2月の株式市場では後者の方が多かったように見えます。
すなわち、会社側から発表された決算はよい内容だったが、市場はそれ以上によい業績を予想して先走って買い進んでいたために、決算発表後には失望感から大きく売られた、というものです。
高く評価され過ぎた株価の行き過ぎが修正されているような銘柄です。

昨年から一貫して続いているグロース株相場がどうやら転機を迎えており、この間に高く評価されてきた銘柄の中には、評価が行き過ぎて2月相場ではその反動による下落が始まった銘柄も多く見られます。
例を挙げれば、下落率でトップとなったアイ・アールジャパンHD(6035、第1位、▲26.5%)です。
この銘柄は昨年(2020年)だけで株価は4倍になり、1年間の上昇率上位のトップ5に登場するほどまでに評価されました。
アイ・アールジャパンHDは企業のIR活動、および株主情報に特化したコンサルティング会社です。
東京市場でもアクティビスト(モノ言う株主)による株式の買い集めが盛んに行われるようになりました。
その際に株主名簿に載っていない投資家を特定するノウハウを持つ同社の役割が重要になります。

2月4日に発表された第3四半期の決算では、営業利益は28.6億円(+23%)と好調で、通期の業績見通しも47.0億円(+29%)と申し分ないものでした。
それでも株価はこの決算を発表した直後から下落に転じ、2月相場を通じて一貫して下げ続けています。
上場企業に対するTOBやMBOは毎日のように盛んに発表され、大量保有報告を提出する義務が生じるほどの大株主の移動も頻繁に起こります。
同社の事業は順調に伸びていることと予想が立ちますが、しかしもはや株価にはプラスの反応は起こりにくくなってきました。

メディカル・データ・ビジョン(3902、第8位、▲22.7%)も同様です。
医療や医薬品に関するデータを集め、分析し提供するネットワークシステムがこの企業の強みです。
病院向け、製薬会社向けのデータ調査、解析を行っています。
2月8日に発表された決算では、2020年12月期の営業利益は11.4億円(+41%)と大きく伸びました。

続く2021年12月期も好調が予想されますが、会社側による営業利益の期初の見通しは12.0億円(+4%)とかなり慎重な数字に留め置かれました。
製薬会社向けに自社で保有する診療データの分析サービスが順調に推移しているのに対して、安全な見通しを提示したことが嫌気されたのでしょう。
その後の株価は一貫して下落基調をたどっています。

同じような例として、ITメディア(2148、第3位、▲24.3%)、GMOグローバルサイン(3788、第11位、▲21.4%)、プレステージ・インターナショナル(4290、第16位、▲19.5%)、ワコム(6727、第27位、▲17.7%)、ダイフク(6383、第44位、▲14.7%)が挙げられます。

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週足表示、2021年3月9日まで

2月5日に決算を発表した自動搬送装置大手のダイフクは、第3四半期の営業利益が300億円(+4%)にとどまり、通期の営業利益も上方修正をした上で425億円(+5%)という慎重な見方に抑えられました。

アマゾン・ドットコムをはじめ、世界のEC、物流会社向けに自動搬送装置、ピッキングシステムを提供しているのであれば、もう少し高い利益の伸びが提示されても不思議ではないのですが、そうはなりませんでした。
期待が剥落して失望を呼ぶ決算内容のように映ります。

決算内容の悪かった銘柄はダイレクトに下落しました。
代表格はニチコン(6996、第4位、▲24.2%)です。

ニチコンはアルミ電解コンデンサの大手企業です。
これまで民生用機器向けが中心で業績面では厳しい状況が続いていましたが、電気自動車(EV)をはじめ車載用、およびFA機器用にアルミ電解コンデンサの採用が進むと見られ、現在は厳しくても将来的は有望との見方が強まっていた矢先の決算でした。
2月12日に発表された第3四半期の決算では、営業利益が9.5億円(▲57%)と大きく下振れしました。
同じく通期の営業利益の見通しも16.0億円(▲37%)と、従来の24.0億円(▲6%)から下方修正されました。
新型コロナウイルスの影響で各社の設備投資が遅れていること、インバーターおよび家庭での蓄電システム向けにコンデンサ需要が落ち込んでいることが業績の伸び悩みにつながっています。

元々の期待が高すぎたのか、あるいは必要以上に事業拡大のためのコストがかさんでいるのか、いずれにせよ市場が予想していた利益水準に届かない企業には容赦ない売り物が浴びせられています。

同じように、Wスコープ(6619、第2位、▲25.0%)、ライドオンエクスプレスHD(6082、第7位、▲22.9%)、日本ユニシス(8056、第9位、▲22.6%)、ジャストシステム(4686、第21位、▲18.2%)、日本ペイントHD(4612、第36位、▲15.9%)が下落しています。

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週足表示、2021年3月9日まで

ライドオンエクスプレスHDは、寿司の「銀のさら」や釜飯の「釜寅」などの料理を宅配(デリバリー)する、コロナ危機で最も必要とされる話題のビジネスを展開しています。

第3四半期もフードデリバリーの需要増を追い風に売上げ、利益ともに順調に拡大しています。
ただしそれらとともにマーケティング費用や販管費の増加が加わり、営業利益の伸びは想定以上に圧迫されています。
通期の業績見通しを従来のままに据え置いたことが市場では嫌気されて株価は軟調に推移しました。

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HOTにしろCOOLにしろ、あまりに急激に収益の変化が訪れたために、成長のジレンマに直面している企業が増えているように感じられた2月相場でありました。
ひとつの転機を迎えた後、ここからさらにどのような企業が登場してくるのか、3月相場も興味の尽きない展開となりそうです。

鈴木一之

鈴木一之

株式アナリスト

1961年生。1983年千葉大学卒、大和証券に入社。
1987年に株式トレーディング室に配属。
2000年よりインフォストックスドットコム、日本株チーフアナリスト
2007年より独立、現在に至る。
相場を景気循環論でとらえるシクリカル投資法を展開。

主な著書
「賢者に学ぶ 有望株の選び方」(2019年7月、日本経済新聞出版)
きっちりコツコツ株で稼ぐ 中期投資のすすめ」(2013年7月、日本経済新聞出版社)

主な出演番組
「東京マーケットワイド」(東京MXテレビ、水曜日、木曜日)
「マーケット・アナライズplus+」(BS12トゥエルビ、土曜13:00~13:45)
「マーケットプレス」(ラジオNIKKEI、月曜日)

公式HP
http://www.suzukikazuyuki.com/
Twitterアカウント
@suzukazu_tokyo

呼びかける時は「スズカズ」、「スズカズさん」と呼んでください。

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